樹脂部品などのめねじ補強に使われるインサートナットは、使用する材質によって強度や加工性などの性能に違いが生じる部品です。本記事では、インサートナットの代表的な素材である真鍮(黄銅)やステンレス鋼について、材質の違いや特徴を解説します。部品選定にお悩みの方は参考にしてください。
インサートナットは圧入タイプのねじインサートで、下穴にポンチやハンマーで打ち込んで取り付ける部品です。樹脂を加熱しながら下穴を溶かして圧入する熱圧入という方法も広く使われています。基本材質は真鍮(黄銅)で、ワイヤーインサートなど他のねじインサートと比べると本体の強度はあまり高くありません。
一方で専用タップを立てる必要が無く挿入工程が少ないため、比較的安価に入手しやすい部品といえます。
黄銅(C3604)は、真鍮に鉛を添加することで切削性を高めた快削黄銅の一種です。切削性に優れ、C3602と比較して工具寿命が長くなるという特徴があります。高速自動盤加工にも適しており、精密計器の部品や歯車、時計部品など幅広い製品で使用される素材です。一方、同じ快削黄銅に分類されるC3602は、C3604と比べて冷間鍛造に向いています。
黄銅に添加される鉛は環境負荷物質のひとつで、加工や摩耗によって飛散したり溶出したりするリスクがあります。C6801は、その鉛の代わりにビスマスを添加した黄銅です。鉛を含まないながらも、従来の黄銅と同程度の強度や切削性、耐食性を備えています。熱伝導性や導電性にも優れているため、電気・電子部品や自動車部品などにも使用される素材です。
SUS303はニッケルを含む非磁性のステンレス鋼で、耐食性に優れた鋼種です。SUS304に硫黄などを添加することで切削性を高めており、インサートナットの加工にも用いられています。
SUS303は切削性に優れる一方、SUS304と比較すると耐食性と溶接性は劣ります。材料費についても、SUS304より高くなる傾向がある材質です。外観だけでは両者の判別が難しいものの、旋盤で削った際に切りくずには違いがあります。SUS303の切りくずは細かく分断された状態になりやすく、SUS304の切りくずは長くつながった帯状になりやすい点が特徴です。
インサートナットは、安価で加工性の良い真鍮(黄銅)製が一般的な選択肢です。鉛を含まない材質が求められる場合は鉛レス黄銅(C6801)、耐食性や非磁性を重視する場合はステンレス鋼(SUS303など)が向いているでしょう。製品の用途や使用環境、求められる材質特性を踏まえて、適切な材質を選ぶことが重要です。


