樹脂成形品に金属部品を組み込みたい場面で、有力な選択肢となるのがインサート成形です。金型内にあらかじめ異素材の部品を配置し、溶融した樹脂を流し込んで一体化するこの工法は、家電製品や自動車部品、OA機器、電子部品、航空機部品など幅広い分野で採用されています。
インサート成形は射出成形の一種で、金型内に金属やその他の素材で作られた部品をセットし、上から樹脂を射出して一体化する技術です。家電製品のコネクタ部や自動車のエンジン周辺部品、OA機器の内部パーツなど、異素材の組み合わせが求められる製品で広く活用されています。
成形工程は4つのステップで構成されます。最初にインサート部品を金型内の所定位置へ配置します。少量生産では手作業、大量生産ではパーツフィーダー等で自動化するのが一般的です。配置後に型締めを行い、溶融樹脂を射出します。樹脂がインサート部品を包み込むように充填・固化した後、型開きをして完成品を取り出します。
インサート部品として使用頻度が高い素材は金属です。ナットやネジ、端子といった締結・通電用の部品が代表例として挙げられます。鉄やニッケル合金など磁性を持つ素材は、磁力で金型内に固定できます。ステンレスや真鍮は磁力を利用できないため、ネジやピンによる固定方法の検討が必要です。
樹脂部品同士を組み合わせるインサート2色成形も実用化されています。耐熱性や機械的強度に優れた樹脂をインサート部品に使い、単一素材では得にくい性能を付与できます。
フィルムインサートでは、印刷や塗装を施したフィルムを金型内にセットし、表面加飾や耐久性の向上を図ります。車載用コントローラーパネルなどで採用例があります。セラミックや木材、電子部品なども用途に応じてインサート素材に選ばれています。
複数の部品を一度の成形で一体化できるため、後工程の組立作業を大幅に省けます。大量生産では生産効率の向上に直結する利点です。
接着強度の面でも優位性があります。溶融樹脂がインサート部品の表面に隙間なく流れ込み固化するため、後から部品を押し込むアウトサートより結合力が高くなります。振動や衝撃が加わる環境での使用に適した特性です。金型で部品位置を固定した状態で成形するため、位置精度の向上も見込めます。
異なる素材が一体化した成形品は、素材ごとの分離が難しくリサイクル性に課題が残ります。環境配慮の観点から、設計段階での検討が欠かせません。
生産設備の面では、パーツフィーダー等の専用機が必要になる場合があり、初期投資が膨らみやすい点も考慮が必要です。少量生産では手作業による部品セットとなるため、人件費が成形コストに上乗せされます。
インサート成形が「成形時に部品を組み込む」工法であるのに対し、アウトサートは「成形後の樹脂製品に部品を埋め込む」工法です。アウトサートでは、金属部品を加熱して樹脂に押し込む熱圧入や、常温で圧力をかける圧入といった方法が用いられます。
大量生産で高い強度・精度が求められる製品にはインサート成形が適しています。少量生産や設計変更が見込まれるケースでは、アウトサートのほうが初期投資を抑えつつ柔軟に対応できます。製品の仕様や生産規模に応じて両工法を比較し、自社の条件に合った手段を選ぶことが大切です。
インサート成形で最も多用される部品が「インサートナット」です。成形時に樹脂が冷却される際の収縮(ヒケ)や、完成後にネジを締結する際のナットの抜け・供回り(回転)を防ぐためには、ナット表面のローレット加工(網目状や斜め状の溝)などの形状を適切に選定することが重要です。
製品の用途や使用する樹脂の特性(熱可塑性・熱硬化性など)によって最適なナットの形状や材質は異なります。そのため、専門的なノウハウを持つインサートナットメーカーへ設計の初期段階から相談することが、安定した品質の確保とトータルコストの削減に直結します。
インサート成形は、金型内に異素材の部品を配置し樹脂で一体化する射出成形技術です。工数削減・接着強度向上・精度向上といった利点がある一方、リサイクル性や初期コストへの配慮も求められます。
製品の形状や素材、生産数を踏まえてインサート成形とアウトサートを使い分けることで、品質とコストの両立を目指せます。
特に締結部品を組み込む際は、製品に最適なインサートナットの選定が不可欠です。インサート成形の導入や部品の選定でお悩みの場合は、実績豊富な専門メーカーへぜひご相談ください。


