ねじ部の強度を高めたいときに使われるヘリサートとインサートナット。どちらもねじの補強に用いられるインサート部品ですが、構造や適した母材が異なります。本記事では、両者の違いや特徴、アルミや樹脂といった母材に応じた選び方を解説。部品設計や試作で迷っている方は参考にしてください。
ヘリサートは金属製のばね状コイルを螺旋状に巻いた構造で、母材に開けた穴へねじ込むことでねじ山を形成します。一方インサートナットは、内側のみにねじ山を持ち、外周に凹凸状のローレット加工が施された一体型の部品です。コイル状か一体型かという構造の違いが、両者を見分ける基本的なポイントです。
施工方法にも違いがあります。ヘリサートを挿入するには、専用タップで下穴にねじを切ったうえで、専用の挿入工具を使う必要があります。対してインサートナットには、圧入や熱圧入などによって取り付けるタイプがあります。タイプによって取り付け方法が異なるため、施工方法も選定時に確認しましょう。
ヘリサートは、アルミ部品や、POMやアクリル、MCナイロンといった耐熱性の高い樹脂に多く使用されます。母材の強度を保ちながら、耐久性の高いねじ部を形成できる点が特徴です。既存ねじが摩耗や損傷した場合の修理用途としても利用されており、挿入後は母材とほぼ面一に仕上がるため、外観を損ないにくいというメリットもあります。
従来のヘリサートは、挿入後にタングと呼ばれる部分を折り取る作業が必要でした。この作業には慣れが求められ、折り損じや取り残しが発生することもあります。現在は折り取り作業が不要なタングレスタイプも普及しており、作業性や仕上がりの安定性を重視する場面で選ばれる機会が増えています。
インサートナットの外周には、ローレットと呼ばれる凹凸形状が施されています。凹凸が樹脂に食い込むことで、抜けにくい状態をつくります。樹脂は金属に比べてねじ山が摩耗しやすく、繰り返しの締結で強度が低下しやすい材料です。インサートナットを埋め込むことで、金属製のねじ部を設けられるため、ねじ山の摩耗を抑え、繰り返し締結しやすくなります。
インサートナットの取り付け方法は、大きく2種類に分けられます。ひとつは射出成形の金型内にセットし、樹脂と一体化させる方法です。もうひとつは、成形後や切削品などに対して、加熱しながら樹脂を軟化させて圧入する熱圧入です。用途や母材の状態に応じて、適した挿入方法を選ぶことが求められます。
インサートは母材の種類や必要な強度、施工方法を基準に選定します。アルミや耐熱性の高い樹脂には、ねじ山を補強しやすいヘリサートが適しています。一般的な樹脂部品には、ローレット形状で抜け止め効果を発揮するインサートナットが向いているでしょう。設計段階でこの違いを押さえておくと、設計上のトラブルを防げます。
より高い保持力が必要な金属や高強度樹脂には、一体型で強度を出しやすいエンザートが選ばれます。木材や人工木材への取り付けには、外周の凹凸が木材に食い込む鬼目ナットが適しているでしょう。母材の種類や求める強度に応じて種類を使い分けることが、部品設計や試作段階での不具合を防ぐことにつながります。


